
「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という言葉を耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、頭が涼しく、足元が温かい状態が、全身の血流を整え、健康を保ちやすくする理想的な状態であることを表しています。漢方の視点から見れば、「気・血・水」が滞りなく巡っている状態といえます。
しかし、この「頭寒足熱」の状態を日常で維持することは、実は意外と難しいものです。特に夏場はその傾向が顕著になります。
自然界の摂理として、温かい空気は上昇し、冷たい空気は下に沈みますが、人間の体も同様で、頭部に熱がこもり、足元が冷えると“冷えのぼせ”のような不調を招きます。冷房が欠かせない夏の室内環境では、知らず知らずのうちに足元が冷えてしまっている方も多いのではないでしょうか。特にデスクワーク中心の方は要注意です。
足元で冷やされた血液は、心臓へ戻る過程で胃腸を含む内臓を冷やしてしまい、機能低下や夏バテの原因になります。また、暑さにより頭部や体表では熱を感じやすく、冷たい飲食物を摂りすぎてしまうことも内臓の冷えに拍車をかけます。こうした内臓の冷えは消化吸収力を弱め、体力の低下や倦怠感に繋がる「夏バテ」へと繋がっていきます。さらに、頭に熱がこもった状態は脳を覚醒させてしまい、睡眠の質の低下にもつながります。眠りが浅くなると、疲労が蓄積し、悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
梅雨が明け、いよいよ本格的な夏の到来です。現代社会では、「暑さ」がむしろ「冷え」の原因となる場面が多くあります。ぜひ、上手に体温調節を行い、「頭寒足熱」の状態を意識しながら、快適に夏を乗り切っていきましょう。