緊張を解すには〜アロマセラピーと栄養学にみる相乗効果〜
「リラックスしたいならGABA」
「気分の落ち込みにはセロトニン」
そんな言葉をよく耳にしますが、それでは、これらの栄養素を単純に食事やサプリメントから補えば気になる症状は回復するのでしょうか?最近では、栄養学においても量よりも種類の多さが重要という考え方も増えてきています。漢方治療においても薬と共に食生活をはじめとした養生が必須になるケースが殆どです。心身のバランスを整えるには、一つの治療法、一つの方法論ではなく多角的なアプローチを層の様に積み重ね、土台を築き上げた上に成り立つと考えています。今回は栄養学とアロマセラピーにおいて起こり得る相乗効果についてお伝えしたいと思います。
栄養とアロマ
同じ「心の不調」にアプローチしながら、まったく違うルートで作用します。だからこそ、この2つを組み合わせることで無理のない、自然な相乗効果が生まれます。
食品から摂るGABA・セロトニンは脳に直接届かない
まず大切な前提として、食品やサプリで摂取したGABAやセロトニンは、脳に直接届いて作用するわけではありません。脳には「血液脳関門(BBB)」という防御機構があり、これらの物質はそのまま脳内神経伝達物質として使われません。
それでも栄養が欠かせない理由
では、栄養素は意味がないのでしょうか?答えは まったく逆 です。
栄養は、
• 神経伝達物質を脳内で合成するための材料
• ストレスによる消耗を防ぐ
• 自律神経・ホルモンの安定
といった形で、「脳が正しく働くための土台」を作っています。
栄養学的に「脳内GABAを増やしたい」なら
実は、GABAを直接摂ることよりも、はるかに重要なポイントがあります。
・ビタミンB6
(GABA合成に必須)脳内では、グルタミン酸 →(ビタミンB6)→ GABAという変換が行われています。
B6が不足すると、
• 興奮系(グルタミン酸)が優位になりやすい
• 不安・イライラ・眠りにくさが出やすい
という状態に。
・マグネシウム
マグネシウムは、
• 神経の興奮を抑える
• GABA受容体の働きをサポート
• ストレスで消耗されやすい
現代人が非常に不足しやすいミネラルです。
・グルタミン酸の過剰を抑える食事
加工食品・刺激の強い味付けが多いと、興奮系神経伝達物質(グルタミン酸)が過剰になりがちです。
結果として、
• GABAが相対的に不足
• 常に交感神経が優位
という状態に陥ります。
・血糖変動を抑える
血糖値の乱高下は、
• コルチゾール増加
• ビタミンB群・マグネシウムの消耗
• GABA系の抑制
につながります。
「甘いものがやめられない」「夜に不安感が強い」そんな方ほど、血糖コントロールが重要です。
大切なのは「幅広く栄養を摂ること」
ここで強調したいのは、 GABAだけを意識しても、脳は整わないという点です。
神経伝達物質は、
• タンパク質
• ビタミンB群
• ミネラル
• 脂質
• 血糖の安定
これらが連動して初めて正しく働きます。単一の栄養素ではなく、全体のバランスが土台になります。
アロマは「脳の司令塔」に直接働きかける
アロマセラピーは、嗅覚 → 嗅球 → 大脳辺縁系(感情・記憶)という経路で、脳にダイレクトに届く数少ないアプローチです。栄養が「作れる状態」を整えるのに対し、アロマは分泌の司令・神経の使い方そのものを調整します。
精油の例:神経系への働きの違い
ラベンダー
― 緊張・不安が抜けない時
• 扁桃体(恐怖・不安中枢)の過剰興奮を抑制
• GABA系の働きをサポート
• セロトニンの消耗を抑える
「頭が休まらない」「常に力が入っている」そんな状態に向いた精油です。
ベルガモット
― 落ち込みと緊張が混在する時
• セロトニン系とドーパミン系のバランス調整
• 気分の落ち込みとイライラの両方に対応
抑うつ気味だけれど、同時に不安や焦りもある状態に。気持ちをフラットに戻すような働きが特徴です。
栄養 × アロマで起こる相乗効果
• 栄養:神経伝達物質を作り・保つ
• アロマ:どの神経系を今、使うかを調整する
役割が違うからこそ、
• 栄養だけでは足りない
• アロマだけでも続かない
という限界を補い合います。
例えるなら…
• 栄養は「ガソリン」
• アロマは「アクセルとブレーキ」
どちらか一方では、心と体はスムーズに動きません。
まとめ
• 食品由来のGABA・セロトニンは→ 脳に直接届かないが、土台を作る
• 脳内GABAを増やすには→ B6・マグネシウム・血糖安定が重要
• アロマは→ 脳に直接働きかけ、分泌調整を行う
• 働く機序が違うからこそ→ 相乗効果が生まれる
心身のバランスを整える近道は、話題の栄養素を「足す」ことだけではなく、多角的なアプローチによってお体本来の働きを取り戻すことにあります。栄養 × アロマという組み合わせもその様な目的ににおいて有効な組み合わせの一つと考えています。
